災害発生時に人はパニックになり混乱が生じると思われていますが、実際には避難行動ができる人は二割で、あとの八割の人は行動ができないと言われています。
「広島県は、昨年7月の豪雨では、災害関連死を含め都道府県別で最多の130人以上の犠牲者が出て、県民の避難行動の遅れが課題として浮き彫りになった。」
避難行動の遅れの原因はヒトの心理的な行動原理が影響しています。
一つは正常性バイアスと呼ばれているものです。
正常性バイアス(せいじょうせいバイアス、英: Normalcy bias)とは、認知バイアスの一種。社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。
自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。
wikipediaより
「いつもの誤報。」「隣の人が逃げていないので大丈夫だろう。」「気のせいだ。」など行動を起こさない理由を見つけて結果的に逃げ遅れてしまう。
もう一つは、「イノベーター理論」というものです。新しい商品やサービスがマーケットへどのように普及するかという理論なのですが、しょせんヒトの行動原理なので、災害時の集団行動にも同様の力学が働きます。
https://www.motivation-up.com/motivation/innovator.html
「モチラボ」イノベーター理論より
東日本大震災で、釜石の奇跡と言われた例があります。同市が津波に襲われた際に小中学校の生存率が99.8%になった事例です。「人が死なない防災」の著者である片田敏孝さんは、岩手県釜石市で防災アドバイザーを務めました。その防災教育は、「自分の命を守ることに主体的たれ」「率先避難者たれ」という教育でした。
「率先避難者」というのが、イノベーターにあたります。
「地震が起きて、グランドに地割れが走ったのを見て、「津波が来るぞ!逃げるぞ!」と言って真っ先に逃げた釜石東中学校のサッカー部員達は、模範的な率先避難者でした。それを、他の中学生たちも次から次へと逃げた。それを見た小学生たち逃げた。さらに、それをじいちゃん、おばあちゃんも逃げた。」(本文より)
津波、洪水、土砂災害、火災事故などの緊急を要する災害では、一瞬の逃げ遅れが致命傷になってしまう厄介なものです。
最初に避難行動をとるイノベーターとそれに続く「逃げろー」というアーリーアダプターの存在が、全体の避難行動を決める鍵になります。