三浦雄一郎アコンカグアへの挑戦 高齢者のリスクマネジメントについて




プロスキーヤー三浦雄一郎さんが1月に南米最高峰のアコンカグア(6961m)に86歳という高齢で登頂とスキー滑降に挑戦しました。
先日行われた三浦雄一郎さんと副隊長の三浦豪太さんのトークショーに参加してきました。
アウトドアスポーツにおける高齢者のリスクマネジメントのヒントがありました。

三浦さんは、2013年に80歳でのエベレスト登頂最高齢記録をもっています。
高齢化社会を迎えた日本では、高齢者の健康寿命という社会課題があります。
高齢者が元気で健康的な生活を送る。
高齢者のチャレンジは意義があるものです。

「86歳の超高所でのスキー滑走は若き日のようにいかなくとも、年齢を言い訳にせず、出来ない理由より出来る理由を考えた方が人は元気に輝く」(三浦雄一郎)
しかし高齢のリスクというものがあります。
数々の冒険を成功させてきた三浦雄一郎さんですが、86歳という高齢、高所に行くにはリスクを抱えた心臓。
中高年のヒマラヤなどでおこる高所登山での突然死。
そのリスクをいかに管理するのかが重要になります。

今回の副隊長の三浦豪太さんのお話が、高齢者のリスクマネジメントとして参考になりました。
印象に残ったのは「事故は、主観と客観の乖離で起こる」という言葉でした。

ポイントをまとめると、

サポート体制をつくる
遠征隊は登山のスペシャリスト、山岳医などドリームチームを編成。
技術、客観性、緊急時のサポート体制をつくる。

安全性、最新の方法論を選択する
ヘリコプター、酸素をふんだんに使うことで酸素の薄い高所のリスクを回避する。
高所から帰ってきた後の後遺症を避ける。

モニタリング
体調を客観的に知るために定期的なモニタリングを行う。

客観的な判断
モニタリングで異常が見られた場合の早い判断。

意思決定の遵守
客観的な評価での意思決定。
意思決定を遵守する。

意思決定の遅れや様子見、後回しにより状況が悪化することがあります。

順調に行っていた行程であったが、6,000mという高所のキャンプコレラで、この地特有の「ビエント・ブランコ」(白い嵐)と呼ばれる強風に阻まれ停滞を余儀なくされます。高所での停滞は高齢者の体力を奪っていきます。
ゴール手前であるが客観的な判断によるドクターストップ。

もし客観的評価より主観的評価を優先して、続行としても「赤字経営や粉飾決算のようで納得がいかないものになっただろう。」と豪太副隊長は話していました。
許容幅が少ない高齢者にとっては、体調が急変するリスクがあり客観的な評価で意思決定し行動することは重要です。

また高齢者のアウトドア活動のリスクマネジメントだけではなく、自然災害が起こった場合の行動も同様です。
正常性バイアスは自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価する心理のことです。この正常性バイアスにより逃げ遅れたり、被害が大きくなることがあります。

残念ながらアコンカグアに登頂することはできませんでしたが、元気で下山されたことは成果です。参考にしたいものです。


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投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年02月28日 | Permalink

帰宅困難について


先日の北海道の地震では、鉄道、地下鉄等の交通機関が乱れ、多くの帰宅困難者があふれました。
当然この時期夜間は氷点下を下回ります。
昨年のように全道で停電すると、一気に低体温症のリスクが高まります。

日中や帰宅時間であれば、もっと多くの人で溢れかえることになります。
災害時の一斉帰宅は、災害救助の妨げや二次災害のリスクが伴います。
ましてや夜間の行動は視認性の悪さから事故のリスクがあります。

どうしても帰巣本能が働いて帰りたくなります。
リスクの見積もり、見通しなど、行動の計画が必要です。
自分はどれくらいの距離をどの程度の時間で移動できるのか?
今の自分の装備(靴や服装)は、どの程度の環境に耐えられるのか?
行動に必要な食べ物や水分は補給できるのか?
災害が拡大して計画が破綻した時のバックアッププランはあるのか?

計画的ではない行動は無駄に体力を奪います。もし次に大きな余震など事態が悪化した場合、行程の途中で移動ができなくなることも考えられます。
止まるという考えも選択肢には必要です。

私はいつもバッグに小さくたためるダウンジャケットを忍ばせています。
アウトドア中の休憩に、屋内で寒くなった時などに使用するためです。
もしビバークや避難所にいなければならない時に中に一枚着るだけで違うと思います。

会社や学校など一日に滞在する時間が長い場所は、災害時にそこに居る確率が高いということです。
「もしそこで災害にあったら?」
ということを考えてみてはいかがでしょうか?

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投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年02月26日 | Permalink

ふじさんの日 富士山は噴火するのか?


2月23日は富士山の日です。
日本一高い山。雄大な単独峰。
信仰の対象であり、絵画や歌に読まれてきました。
富士山からの湧き水や、水はけの良い土地は高原野菜の産地として有名です。
2013年には世界遺産に選ばれ多くの観光客が訪れます。

多くの恵を与えてくれる富士山ですが、これは長年の火山活動がもたらしたものです。
さまざまなタイプの噴火をしてきた日本一の活火山とも言えます。

古文書にある富士山の大きな噴火は、
800年〜802年(延暦19年)貞観大噴火
864年(貞観6年)延暦大噴火
1707年 宝永大噴火
です。
宝永噴火から約300年間沈静化しています。その間にもマグマを溜め込み次に噴火するときには大規模な噴火になるのではないかという予想があります。
もし富士山に大きな噴火があると、付近への溶岩流や噴石、火砕、泥流など直接的な被害、首都圏への火山灰の被害。日本の大動脈である東海道新幹線、東名、新東名の寸断などが考えられます。

また富士山の噴火と巨大地震が連動するのではという懸念があります。

地球表面は大きく14,5枚のプレートという岩盤に囲まれています。これのプレートは年間数センチ、爪の伸びる速度で動いています。
これをプレートテクトニクスといいます。
日本付近は、世界でもまれにみる、ユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートの境目に当たっています。
プレートの境目では、陸側のプレート(軽い)に、海側のプレート(重い)が沈み込みます。陸側のプレートが海側のプレートに引きずり込まれる形となります。曲げられた陸側プレートが限界に達すると跳ね上がります。これが海で発生する大規模な海溝型地震となります。東日本大震災のパターンです。南海トラフ地震が懸念されています。
陸側の活断層で起こるものが、直下型と言われる内陸性の地震です。これは震源地が浅く私たちの生活圏に近いので被害は大きくなります。熊本地震や北海道胆振東部地震などです。
地震発生のメカニズムは、分からないことも多く見方が変わるかもしれません。

宝永地震(東南海地震)の巨大地震の49日後に宝永大噴火が起こりました。今後も南海トラフ地震と富士山地震の連動が心配されます。

今の科学技術では地震や噴火の予知は難しいです。
明日来るかもしれないし、これから100年間はないかもしれません。
しかし地球の自然活動上いずれ起こるものです。
一撃を考えると備える必要があります。

アウトドアの知識や道具を防災、減災に活かしましょう。
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参考文献
富士山噴火-ハザードマップで読み解く「Xデー」鎌田浩毅著 ブルーバックス B-1576
もし富士山が噴火したら 鎌田浩毅著 高世えり子著  東洋経済新報社
富士山大爆発のすべて -いつ噴火してもおかしくない 島村 英紀/著 花伝社
「噴火の目」で予知する富士山噴火のXデー 木村政昭著 マガジンランド

富士山火山防災マップ
http://www.bousai.go.jp/kazan/fujisan-kyougikai/fuji_map/

投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年02月23日 | Permalink

冬の災害は、低体温症に注意!

北海道で大きな地震が発生した。
震源地は昨年の北海道胆振東部地震と同じ厚真町で震度6弱を観測した。
幸い今回停電はなかったようだ。
今時の北海道の家庭のストーブは、灯油であっても電気を使うものがほとんどである。
この気温の低い季節に停電になると、ストーブが使えなくなると低体温症のリスクが高まる。
低体温症を知ろう「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」を読んで

こればかりは備えがないとどうしようもない。
電気を使わずに使用できるいわゆるポット式のストーブ等がある。集合住宅などでは火災のリスクを避けるために使えないところもある。
あとは重ね着でしのぐか。
暖をとるには道具という備えが必要である。



地震予知では南海トラフ地震発生のおそれが強調されているが、その間に東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震の巨大地震が発生した。
プレートに囲まれた日本ではいつどこで大きな地震が発生してもおかしくないと考えるべきだろう。
いつ来るか分からないものに備えをすることはできないと考える人もいると思うが、一撃が大きすぎる。

実際に、私は東日本大震災での教訓から備蓄、備えが昨年の北海道での地震に役立った。
アウトドアスポーツで学んだことは、可能性のあるものはいつか来るである。
不安や心配であれば、備えや対策という行動を起こすことである。
あの時ああしていればと後悔はしたくないものである。

こどもからの防災、減災教育プログラム
72時間サバイバルのページはこちら!


投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年02月22日 | Permalink

低体温症を知ろう 「トムラウシ山遭難はなぜ起きたか」を読んで


夏の低体温症による大量遭難についてかかれた「トムラウシ山遭難はなぜ起きたか」を読んだので、低体温症についてあらためて考えてみたい。

これは、2009年7月16日に北海道大雪山系のトムラウシ山において、8名の人々が低体温症と見られる死亡事故が発生したものです。夏山シーズンとしては前代未聞の痛ましい遭難死亡事故となりました。

ファーストエイドやリスクマネジメントのセミナーでよく出てくる事故事例です。
低体温症は冬だけではなく一年中発生しています。東日本大震災では、地震後に暖がとれず低体温症で亡くなった方が多くいました。昨年の北海道胆振東部地震で北海道中が停電しブラックアウトしました。これが冬季間であれば、低体温症による犠牲者が相当数出た可能性があります。

まずは低体温症を知っているかいるかどうかがポイントになります。
低体温症が進行すると脳に支障が起きて正常な判断ができなくなります。
こうなると自分でリカバリーすることができなくなります。

この本はシナリオとしてそのときの現場の状況が想像できます。どのタイミングでどういう判断、行動すれば事故が避けられたのかを考えるよい教材です。
低体温症についても、よく書かれており理解が深まります。

あなたならどこでどのように判断し行動しますか?



災害は冬にも起きます。
冬に電気が止まったらどうしますか?

サニーサイドアウトドアスクールでは、
防災、災害のための教育プログラムを行っています。
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投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年02月16日 | Permalink