防災、減災教育のメリットとは?


前回、「防災、減災はなぜ必要なのか」で災害の被害を減らすためと書きました。
今回は「防災、減災に取り組むメリットは何か」ということを考えます。


私たちヒトは、集団を組むことによって生存率を高めてきました。
その中で役割を分担し分業することで社会を築き上げてきました。
その中で重要なのが、コミュニケーションです。

現代の日本では、社会システムが発達し、生命維持に必要な食料や安全な水が簡単に手に入れることができます。
世界を見渡せばそういう国ばかりではありませんし、数十年前の日本も同じでした。
あるコミュニティに属し、その中の一員として役割をはたしコミュニケーションを取らねば生きていくことはできませんでした。




学校や会社や社会でコミュニケーションが深刻な問題になっています。

災害時に、自立的にコミュニティが発生しヒトは助け合うことが知られています。(「災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか」レベッカ・ソルニット著)
この助け合いは、ホモサピエンスとしての本来持っている力で、自立、自律的に成立するものです。

今は、インターネット、SNSでの電子的なコミュニケーションツールとコンビニなど物流などの便利なツールで済んで、生身のコミュニケーションをしなくても生きていくことができても、大規模な災害が起こるとこのシステムは機能停止に追い込まれます。
生き残るためにはその場にいる誰とでもコミュニケーションをとり助け合う必要があります。

今後、社会は大きな変化を迎えると言われています。
大規模な災害も大きな変化と言えます。
多様な考えや知恵を持つ集団でその変化を乗り切る。

防災、減災教育は、避難や基本的なサバイバルスキルの取得だけではなく、チームで話し合う、助け合うという基本的なコミュニケーションで問題を解決することを気づき、学ぶことができます。
災害だけでなく、今後起こる大きな変化に集団で対応することができるのではないでしょうか。


投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年06月30日 | Permalink

防災、減災はなぜ必要なのか


先日、「防災、減災をするメリットは何ですか?」と聞かれました。
ヒトは動機がハッキリと分からないと行動には移せません。
防災、減災が必要な理由を考えます。


防災、減災はメリットというよりも、災害が起こった時の被害を少なくするというデメリットを減らすためです。

東日本大震災では、死傷者が1万5,895人、行方不明者は2,533人です。その内14,308人(90.64%)が津波による溺死です。
避難所の不衛生や寒さなどが原因で、避難後に死亡する例(震災関連死)が高齢者を中心に3,647人を数えています。

津波や洪水、土砂災害では、災害発生時の一撃が命を脅かします。避難のタイミング、迅速な行動が重要になってきます。
しかしヒトは、「いつものこと」「この前は大丈夫だった」などの正常性バイアスや、「近所ではだれも逃げてはいない」などの同調性バイアスなどの心理的な働きによって、避難行動がとれないことが分かっています。
一撃から逃れるためにも、知ること、行動できることが重要となります。

避難後に起こる災害関連死については、備えが必要になります。
大規模な災害では、公助の手がすぐには行き届きません。自治体の備えている備蓄も全員に行き渡るかは分かりません。人口密集地域では、被害の大きなところの救援が優先され、道路の破損など救助が遅れることが予想されます。
自らの食料、水、燃料の備え、助け合う「共助」が重要になってきます。

政府の中央防災会議では、南海トラフ地震では、死者32万人、被害額は215兆円と試算されています。
これをいかに減らすかは自らの防災、減災対策にかかっています。


投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年06月30日 | Permalink

災害発生から復興までの三つの局面


災害が発生してから復興までに三つの局面があると考えています。
それぞれの局面ごとに必要な行動を考えます。


私たちの住んでいる日本は、風向明媚な山や海が身近にあり、温泉があり安全な水があります。四季があり変化に富んだ豊かなところです。
しかし一方で、プレートに囲まれた地震の多発地帯で、台風や寒波など気象のリスクもあります。
そういうところに住んでいる私たちは、災害のリスクから逃れることはできません。

災害に対して、「自分の身を守る」、災害の被害を最小限に食い止めることによって、復興までの道のりを短縮することができると考えます。
そのために防災、減災という考え、備えが必要になります。

大きな災害になると、防災、減災といっても、それぞれ局面によって、事態の変化、必要なと知識や道具、行動が変わります。
災害発生から復興までをを三つ局面に分けて考えました。

第一の局面は、災害が発生する前の警報レベルから災害が小康状態になるまで、地震であれば余震が収まるまで、ー1日から3日後くらいまでです。
台風や大雨などの気象的なリスクは警報で知ることができます。しかし地震は今のところ予知ができません。

第一の局面は、災害の直接的な被害からの避難です。地震での建物の倒壊や家具の転倒、津波、火災、洪水、土砂災害、などからのその場から避難、あるいは脱出です。
この場面では自分の命は自分で守らなければなりません。「逃げ足の速さ」運動反射的な行動がものをいいます。
この局面での問題は、災害に対する認知の遅れです。正常性バイアスと同調性バイアスと呼ばれるヒトや集団が持っている「いつものことだ」「この前は大丈夫だったろう」「隣が逃げていないから大丈夫だ」等の心理的な傾向のことです。

第二の局面は、災害によってライフラインが止まり社会システムが機能不全に陥った状態です。災害発生から電力が回復するまでです。
災害によって大規模な停電や断水が発生します。私たちの生命維持に必要な安全な水や食料は、社会システムに頼っています。
東日本大震災と北海道胆振東部地震で3日間の停電を経験しましたが、今の物流や生産システムは効率化の元に停電に対していかに脆弱だったのかと痛感しました。

すぐには公助は手が行き届きません。被害が大きく緊急を要するところへ救助の力が注がれます。電力が復旧するまでは他のライフラインも復旧しません。
コンビニに代表されるように、今の日本ではいつでも便利にモノを手に入れることができます。平時ではストックが不要だと感じることがあります。個人の冷蔵庫でもコンビニやスーパー、ホームセンターであっても、余計なストックを持たないようにしているのではないでしょうか。
必要なモノであっても手に入れにくい状態です。
人口が密集した地域や大規模な災害では、3日間で復旧するとは思えません。

第三の局面は、電力が回復しインフラ全般がが復旧し、風評被害が収まった復興した状態です。災害の規模や地域差はありますが、約半年といわれています。
すぐに元の生活通りとは行きません。直接的な被害があるものは復旧が必要です。特に食品工場などは衛生面の問題があり再稼働には時間がかかると聞きました。
また風評被害も起こります。
被害が多ければ、その分復旧、復興が遅れるということです。
被害を最小限にすることで、復興までの道のりを短くすることができます。
これは物理的な復旧だけではなく、ヒトの気持ちの変化にもよります。


投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年06月28日 | Permalink

災害時の連絡方法は?

もしものとき自分のいのちを守る

もしものとき自分のいのちを守る

こどもだけのときにも災害は起きます。 「自分のいのちを守る」ための『72時間サバイバル』です。



こんにちは、サニーサイドアウトドアスクール校長の上野です。
災害時の会社や家族への連絡方法はどのように考えていますか?

すぐに思い浮かべるのは携帯電話でしょう。
しかし何か大きな災害が発生すると、被災地に電話が集中し処理能力をオーバーしてしまう輻輳という状態になりつながりません。
何度も掛け直すことによってさらに状況は悪化します。

基地局が被害を被ったり、停電で機能が停止してしまうこともあります。

キャリアの通信規制があります。

SNSはインターネットで通話とは別ルートなので有効です。
親しい人はLINE。仕事関係ではfacebookなど使い分けることができます。
twitterの情報は早いのですが、デマも流れます。一次情報にできるだけ近づくようにして判断してください。

しかし昨年の北海道胆振東部地震では、私の住んでいるところは、携帯電話のインターネットが一日でつながらなくなりました。

災害の被害により、通信手段は確実なものはありません。

災害時の電話以外の連絡方法や、連絡がつかない場合もあるので、「避難する合流場所をいくつか決めておく」「171災害伝言ダイヤルを活用する」「出社か自宅待機かのラインを決めておく」などお互いに行動のガイドラインをあらかじめ決めておく必要があります。


『もしものとき、自分の命を守る』『もしものとき、行動ができる』ためのこども災害サバイバル教室「72時間サバイバル」の情報はこちら!


投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年05月09日 | Permalink

もしも航空機火災に巻き込まれたら

もしものとき自分のいのちを守る

もしものとき自分のいのちを守る

こどもだけのときにも災害は起きます。 「自分のいのちを守る」ための『72時間サバイバル』です。


あーやんさんによるイラストACからのイラスト



5/5にアエロフロート・ロシア航空の旅客機スホイ・スーパージェット100(73名の乗客と5名の客室乗務員)が緊急着陸して炎上した。
死者は41名になりました。


アメリカの国家運輸安全委員会 (NTSB) の行った調査によると、航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%であるという。
航空事故 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/航空事故

確率的には事故の可能性は低いとはいえ、不幸にも航空機の火災に巻き込まれた時の対処法をたまたま読んだのでシェアしておきます。


緊急事態から脱出するために乗客がすべきこと

飛行機というものは、一度火災が発生すれば、地上で停止している場合でも不時着する場合でも、ほとんど同じくらい危険な目にあうものだ。キャビンの火災では、ときには100人以上が極めて危険な状況に追い込まれる。こうした最悪の事態に対しては、事前によく考えておいたほうがいい。
ジェット機がエンジン爆発をおこしたり、低速で滑走路に不時着したりして搭載燃料に引火すると、そうした事故につながる。

今はまだ命のある乗客も、脱出するのにほんの数分、おそらく秒単位の時間しか残されていないという状況になるのだ。

狭い機内では、愉快に身を伏せれば踏みつけられる。鼻と口をおおためのハンカチを取り出そうと行のバスだけで、叩かれてバランスをしまう危険がある。人々は切羽詰まって、狭い非常ドアに殺到する。

合成樹脂とジェット燃料の燃えた煙を吸引すると、たちまち中毒にかかる。

死亡したその大半は高熱ではなく、煙を吸い込んだことが命取りとなった。すすけた黒色混合物には何百と言う有毒化学物質が含まれている。

知っておいたほうが良い予防措置もある。緊急時についての説明の間、他の乗客は新聞を読んでいても、あなたはいちばん近い非常ドアまでの椅子の背もたれの数を覚えておこう。火災が発生した場合には、このことを知っておくことが必要になる。なぜなら煙が黒くて濃いので、通路から非常ドアは見えないからだ。煙の下になろうと、かがみこんではいけない。機内がほぼ無人状態でなければ、踏みつけられるだけだ。空港で搭乗した時、どのドアから入ってきたということは、たまたまそれがいちばん近くて安全なドアでないかぎりは、無視せよ。機体の炎上と崩壊を調査した結果、ほとんどの乗客は、空いている出口の脇を通りすぎ、わざわざ苦労して客室の端まで歩いて、搭乗口のドアめがけて殺到することが明らかになっている。もし飛行機が停止し、それが火災発生のせいだと分かったら、ただちに脱出せよ。

「最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか」 ジェームズ・R・チャイルズ 草思社

『もしものとき、自分の命を守る』『もしものとき、行動ができる』ためのこども災害サバイバル教室「72時間サバイバル」の情報はこちら!


投稿者名 上野陸 投稿日時 2019年05月08日 | Permalink