大災害では人はどのような行動をとるのか
実際の大地震やテロなどの大きな災害が発生した、日常のシステムが機能不全に陥り、社会は混乱したとき、人はどのような行動をとるのだろうか?
「大惨事に直面すると、人間は利己的になり、パニックに陥り、退行現象が起きて野蛮になると言う一般的なイメージがあるが、それは真実とは程遠い。」本文より
『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体がたちあがるのか』 1906年に起きたサンフランシスコ大地震、1985年のメキシコシティの大地震、2001年の911のテロ事件、2005年のニューオリンズを襲ったハリケーン カトリーナの大災害、大惨事後の人々の行動を描いている440ページに及ぶノンフィクションだ。
第二次大戦の爆撃から、洪水、竜巻、地震、大嵐に至るまで、惨事が起きたときの世界中の人々の行動についての何十年もの綿密な社会学的調査の結果が書かれている。
私自身が、2011年東日本大震災、昨年の北海道胆振東部地震で、感じていたことが書かれていた。
市民は、「地震、爆撃、大嵐などの直後には緊迫した状況の中で誰もが利他的になり、自身や身内のみならず隣人や見も知らぬ人々に対してさえ、まず思いやりを示す。」自発的に必要な食べ物を分配する食堂を運営したり、物資を調達するなどの市民コミュニティが立ち上がり、市民社会が実現する。
災害によって、長年の心配事や長期的プランは完全に意味を失っていた。人々は今を生きることに集中し、貧しくなるよりは、豊かな気持ちになり、束の間のいつもと違う自分自身を楽しんでいた。
一方、平時に機能するようにシステムができている行政は、エリートパニックという機能不全に陥りやすい。「大惨事が起こると人々はパニックに陥る。」行政がこれを懸念するあまり、発表が遅れたり、過小評価を与えるような表現になったりして、市民の避難が遅れ、低い認識になることが起こっている。
また「大惨事に人が直面すると人は、退行現象が起きて野蛮や行動に出る」という性悪説を信じる人々が最悪の行動を起こし悲劇が起こる。
休止期を終えて活動が活発になっている地震活動や火山活動、気候変動による災害が頻繁に起こっている時代に、都市への集中化、電力への依存が進んでいる。
このような状況で災害が起きれば、被災規模が大きくなることが予想される。
「災害は決してそれほど遠くにあるものではない。その時に人々がどう行動するかを知る事は、災害への備えにとって決定的に重要だ。そして、人々の立ち直りの速さや、社会的または心理的な反応や、突然の災害がもたらす可能性について学ぶ事は、将来の社会といった持続的な問題のみならず、貧困や経済危機や環境劣化などのよりゆっくりと進行する災害の研究とも関連してくる。 」本文より
災害の備えはもちろんだが、同時にわたしたちの生活の見直しというのも必要だと感じた。