アーティック5 インプレッション


ニビュークのEN-Cクラス アーティック5が上陸しました。
クロスカントリーモデルとして注目されるグライダーです。
2017年の秋に発表予定でしたが、デザインの再検討が行われました。
潜伏期間を経てどのように変わったのでしょうか?


この日北海道はドライな空気で6月なのに気温が30度という最高のコンディションに恵まれました。
まさにアーティック5をテストするのに絶好のリアルコンディションです。

まずはグライダーを広げチェック。

鮮やかなブルー。今日の空に映えます。

今回アーティックシリーズにも前縁に形状合金ニチノールが搭載されました。
アーテッィク4は過渡期でナイロンスティックでした。
ニチノールは軽くスリムなのでパックアップが扱い安くなります。もちろん翼の形状、剛性が高くなります。

ライズアップで肩慣らしです。
風は3〜4m/s入っています。
空気の入りインフレーションはすぐです。

ここ最近Aクラスのテストフライトばかりしていたので少し慎重になっていると、サーマルブローが入りアーティック5は「早く行こうよ」とグイグイ前に出ようとします。
ちょっと待って!



ハンドリングの感じを確認し風を選びテイクオフ。
パワフルな翼のイメージでしたが、テイクオフ特性はスムーズでした。

小さく強いサーマルでまとまりがありません。
やべーと前進していくとなんとか低いところでヒット。
一周分の大きさはない難しいサーマルでした。
アーティック5の直感的なハンドリングが活きました。
ハンドリングのタッチは、重さは十分にありますがレスポンスは鈍重ではありません。かといって走り過ぎることもないです。兄貴分のEN-Dクラス「ピーク」の影響が感じられました。

そういえば、低いところのサーマルは、ピーキー、ゴツゴツという感じでしたが、翼端が潰れたり、変形するような感じはありませんでした。
さすがニビュークグライダーといった翼のしっかり感があります。
頼もしい!

山のピークを越えるとサーマルが成形されて一安心。
アーティック5のタイムリーな感性と直感的なハンドリングで楽しいクライミングタイムをリラックスして満喫しました。

サーマルトップまで上げたので、グライディングしてみます。
まさにクリーンな翼です。
上面の後縁部分にナイロンステックが直線上に入っていて、膨らみを抑えスムーズなエアストリームを実現しています。
極上のクルージングタイムです。



ラインは、縦3列、横3列のオーソドックスはタイプです。
ラインの材質は、トップがダイニーマ、ボトムはアラミドのいずれも被覆なしです。


あたらしい二段階のロックシステムがついたアクセル



3×3列のラインプランなので、ビッグイヤーはAライン外側でできます。
簡単に折れますが、もしばたつくことがあれば再度やり直してください。


2ライナーグライダーを彷彿とさせるパワフルな翼、翼の剛性感、しっかりとしたハンドリング、そして軽量性は、最新技術を盛り込んだEN-Cクラスをイメージしたグライダーです。
まさにクロスカントリーにふさわしいグライダーに仕上がりました。

パフォーマンスを楽しみたい方はトライしてください。
試乗機は 24(75-95kg)26(90-110kg)があります。
22(60-80kg)も入荷予定です。

アーティック5
ニビューク社 EN-C
¥570,000(税別)

詳しい情報はこちら



投稿者名 上野陸 投稿日時 2018年06月08日 | Permalink

EN-A王道 Φファイ ソナタ インプレッション


あの天才デザイナーハンネス・パペッシュさんが独立した新生パラグライダーメーカー「Φファイ」から、第二弾 「ソナタ」がリリースされました。

第一弾は、最も安全性が高いEN-Aクラス=初級機という従来の常識をくつがえすソアリングモデルという全く新しいコンセプトのグライダー「シンフォニア」でした。

かんたんにいうと、ENとはパラグライダーの安全性能規格のことです。コラップス特性(翼が潰れた時の挙動、回復性)、難易度を示したものです。A,B,C,Dと分かれていてAクラスが安全性が高く、順番にDクラスは難易度が高いことを示しています。


Φファイのラインナップ予定


ハンネス・パペッシュさんは、EN-A、EN-Bクラスのグライダーをつくるのがとても上手いデザイナーです。
Φファイを立ち上げることになった経緯は、パラグライダーをより安全に楽しめるようなグライダーをリアクションよく創るコンパクトな会社にしたかったというものでした。

EN-Aクラスに三機を投入するというコンセプトは今までにないものです。パペッシュさんの安全性に対する意欲が感じられます。



さっそくグライダーを触ってみます。
翼をつくるライズアップ性能がすばらしい。
ライズアップがマイルドでスムーズなのです。
ビギナーが最初につまづくことが多いのがこのライズアップです。
全般に素材の進歩で軽くなっている傾向ですが、一定の速度で立ち上がってくる感覚がいいです。
ライザーに伝わる重さがビギナーにも分かりやすいです。
重すぎることはありませんので。
初めてパラグライダーに触れる人にとってもやさしいです。

フライト特性はとってもマイルドです。
多少オーバーコントロールでも吸収してしまう感じです。



ラインはカラフルでラインチェックもやりやすいです。
ライザーはカラーで分けられています。
チェックミスが少なくなるように配慮されています。



前縁は、柔らかい素材のスティックが入りエアインテークがしっかりと開いています。



前縁の上部は、最新の技術であるジグザクパネルが配置しています。
セルの膨らみを減らす働きがあります。


ソナタの位置はベースラインという言葉を使っています。
ビギナーが初めてフライトするファーストグライダーはこうあるべきだという骨太さを感じました。
ΦファイがEN-Aクラスに3ラインナップ投入する意味が分かりました。
明確にコンセプトを分けると、パイロットのレベル、目的にフィットしたものになります。

パラグライダーのテクノロジーが、安全性や使いやすさに向いていくのは、高齢化社会や成熟期においては必須の流れに思えます。

ソナタは、ファーストグライダーややさしいフライト特性を求める方におすすめです。

Φファイ ソナタ EN-Aクラス
¥420,000(税別)

ソナタの情報はこちら!



投稿者名 上野陸 投稿日時 2018年05月30日 | Permalink

コヨーテ3 P(軽量EN-A)インプレッション


ニビューク社EN-Aシリーズ コヨーテから軽量バージョンのコヨーテ3 Pがリリースされました。
本気度の高い軽量シリーズをリリースしてきたニビューク社。
EN-Aクラスはどんな仕上がりにしてきたのでしょうか。


EN-Aクラスというと、初級機といったイメージを持つかもしれません。
最新のテクノロジーやマテリアルの進化にともない、EN-Aクラスにバリュエーションが増え個性的なグライダーが登場し始めました。
安全基準がもっとも高いEN-Aクラスのフライトの幅が広がることは、リスクを含んでいるこのスポーツにとって歓迎すべきことです。



ニビューク社は、Amazing Adventuresと題して軽量グライダーにまつわる冒険をピックアップし推してきました。
グライダー名の後ろのPは ニビューク社の軽量シリーズを象徴する文字です。
plumeのpで、羽、羽毛といった意味です。


今回のコヨーテ3 Pのは、EN-Aクラスのシンプルな構造の特徴と相まって、軽量性、コンパクト性、ライザアップ特性、安定性が上げられます。
ノーマルのコヨーテ3(24サイズで4.5kg)でも十分に軽いのですが、3.45kgと1.05kgペットボトル二本分軽くなっています。ミニウイングや一枚翼を除けば、最も軽いグライダーです。
この軽量性とコンパクト性は、ハイク&フライの強力なアイテムとなります。


ハイク&フライは、車やゴンドラでテイクオフまで上がっていたものを、フライトのための手段から、周りの景色や自然観察を楽しみながら自分の足で登りアプローチを楽しむものです。
テイクオフに到着したときの充実感や爽快感は何ともいえないものです。自分の飛び道具を自在に持ち運ぶことができるのは、パラグライダーというコンパクトなギアにだけできるものです。



さっそくグライダーを広げてみよう。
セール上面は、ポルシェスポーツ セミ軽量タイプのスカイテック32g/m2。HOOK4P以上のグライダーとはことなった選択をしています。パラグライダーの取り扱いが慣れていない初心者が選ぶ場合でも安心できる材料です。軽量セールを選ばなくても十分に軽いという判断もあってでしょう。
セール下面は、軽量タイプのスカイテック27g/m2です。
ちなみなセールを引きずらないように注意がされています。
ラインは、ボトムラインは被膜つきです。ミドルとトップはむき出しのアラミド製ラインです。




ライザーはちょっと細い12mmのテープが採用されています。
ダイニーマのテープではないので、ライザーの捻れなどは発見しやすいと思います。



強めの風だったので、真ん中1/3だけエアインテークを広げライズアップ。ノーマルのコヨーテ3もライズアップ特性がいいのですが、さらにイージー。
上面がセミ軽量の記事なので、後縁から風が入り煽られることもなかったです。
ライズアップ特性、取り扱いやすさはとてもバランスがいい。初心者にとってはこれメリットです。
リラックスしてテイクオフができます。


ちょっとテイクオフでグランドハンドリングで遊んでからフライト開始!
Aクラスなので、ブレークコードのストロークは長めです。
まずはリッジでお試し。強めのサーマルがきたので旋回します。
春のコンディションです。小さく強いサーマルです。
Aクラスは安定性が強いので、ハイバンクを維持する操作が必要です。
風が強めなので流されないよう注意します。
上げきることができました!



軽量機特有の翼の柔らかさはあまり気になりませんでした。アスペクト比が低いこともあるかと思います。
構造的にしっかりしているイメージでした。
ビッグイヤーは、導入、維持はイージーです。
戻りもスムーズです。
ランディングは風が強めでしたが、吹き抜けをうまく使い高度を調整できました。
Aクラスの安定性は気楽です。



コヨーテ3 Pは、初心者から扱えるグライダーです。
将来的にハイク&フライを考えている、より軽いライズアップや軽量化したい方におすすめです。

EN-Aクラスに軽量機、パフォーマンス機というバリュエーションが広がるのは、本格的にグライダーが成熟期に入ってきたことを意味しています。
テクノロジーのベクトルが安全性に振れてくるのは、いいことだと思います。
(「安全性が上がった分リスクを取る傾向がある」とヒューマンエラーで教わりました。気をつけましょう。)

EN-AクラスからEN-Bクラスというステップアップはわかりやすい成長の目安でありました。

これからこのスポーツが成熟期を迎えるに当たって、人それぞれに合った自分基準、目的を持ち、それぞれに合ったパラグライダー選びがあってもよいのではないでしょうか。

コヨーテ3 Pの詳しい情報はこちら


投稿者名 上野陸 投稿日時 2018年05月25日 | Permalink

ΦPHI シンフォニアの秘密


オリジナルな設計で独自の道を行く天才デザイナー ハンネス・パペッシュさんが、ΦPHIを立ち上げてまでも創りたかったグライダー『シンフォニア』。

最も安全性が高いEN-Aクラスを取得し、ソアリングやクロスカントリーをもこなす十分なパフォーマンスを備えた実力を持つグライダーが誕生しました。
50セル、アスペクト比は5.14とEN-Bクラススタンダード並のスペックを持ちます。

3Dシェイプ、内部構造、低抗力設計など天才パペッシュさんの最新テクノロジーが凝縮されています。

レジャンドパイロット マイク・クングさんが尊敬しているというパペッシュ作品、その秘密を教えてもらいました。

『シンフォニア』はEN-A イコール ビギナークラスという常識を覆しました。
安全性が高くフライトを楽しめる本格派グライダー『シンフォニア』の秘密を紹介しましょう。



3Dシェイプ



パラグライダーはセールに空気を取り込み翼型を形成します。柔らかい素材なので膨らみができてしまい揚力のロスがおきます。ギザギザのパネルをはめ込むことによって、この膨らみをよりフラットにして効率よく揚力を生み出します。


スパン方向のバンド



下面から透けて見えるスパン方向のバンドです。
前縁部分、中央、後縁と三ヶ所にバンドを配置しています。
スパン方向の剛性を高めます。

翼の翼端が前進してしまうとか、翼が収縮してしまうのを防ぎます。
このバンドはグライダーのスパン方向の変形を防いでくれます。

後縁にはミニリブが配置してありシェイプを保ちます。


ブレークコード ギャザリング



ブレークコードの付け根にあるスカートのヒダと同じ形状のものです。
ブレークコードの引き始めは白いテープが縮まり、翼をコントロールします。
後縁が引かれないので抗力は最小限度で済みます。


ダイアゴナルリブと少ないラインプラン



パペッシュさんの得意とするのが、ライン数の少なさです。
ダイアゴナルリブ(斜めのリブ)を配置して構造を工夫しラインを減らしています。
有害抵抗は減りパフォーマンスは改善します。


シンフォニアには、EN-Aクラスとは思えない抵抗感のなさ、サーマルソアリングのしやすさ、スムーズなグライディングを感じていました。

最新のテクノロジーが取り入れられ、それが難しさではなく、パイロットに寄り添ったものになっています。「リラックスしてフライトを楽しもうよ」というメッセージが込められているように感じました。

マイク・クングさんというアクロフライト、テストパイロット、X-ALPSと常にパラグライダーの第一線で活躍して来たパイロットが全く新しいグライダーと語る「シンフォニア」ぜひお試しください。

試乗機は、18から24までございます。
気になる方はスクールさんにリクエストしてください!


シンフォニアのページはこちら


投稿者名 上野陸 投稿日時 2018年02月05日 | Permalink

Φ(ファイ)のシンフォニア(EN-A) ファーストインプレッション


あのNOVAでメンター2,3を開発したオリジナリティの高いデザイナー ハンネス=パペッシュさんが立ち上げたメーカーΦ(ファイ)の『シンフォニア』がいよいよデビューです。
EN-Aクラスで50セルという全く新しいコンセプトのグライダーです。

一番安全性の高いEN-Aクラスの認証を取得し、50セルというセル数の多さに最新の機能、いったいどのような飛びをするのでしょうか?

20名のインストラクターのみなさんに乗ってもらい感想をお聞きしました。



まずはテイクオフ特性からです。
インストラクターのみなさん、すぐさまライズアップをして感触を確かめます。

セミ軽量生地を使用しているので軽めのグライダー重量です。
EN-Aクラスでらしい早すぎず、重すぎずです。

たいていずうっとグライダーを上げたままです。

頭上安定の収まりも良いとの評価です。



EN-Aクラスは、30〜40セルのものが多いです。
Aクラスで50セルというは、異例の多さです。
アスペクト比(実測)は5.14と若干高めです。

フライトの印象で『なめらか』という感想が多く聞かれました。
セル数が多くなれば翼の剛性が高くなり、上面がよりフラットになり揚力のロスが少なくなります。
Aクラスにはない高揚力がシンフォニアの一つの特徴です。

前縁や後縁で3Dカットや後縁のミニリブと随所に抵抗を減らす工夫がされています。
ラインプランは縦は2列で横が3.5列で抗力を減少させています。

これらの成果であるなめらかなピッチングのをごらんください。



Aクラスなので、ブレークコードのストロークは長めです。
50セルの高揚力性は、シビアにならずにゆったりと飛ぶと相性が良さそうです。

パラグライダー開発は止まることなくパフォーマンスが進化してきました。スポーツ性と捉えるといいのですが、パラグライダーも成熟期にさしかかり、快適性や親和性など別のベクトルがあってもいい時期です。

シンフォニアは、テクノロジーがパイロットに優しく寄り添っていると感じました。

Φは、EN-Aクラスに3機のラインナップを投入します。
50セルのシンフォニア、40セルのソナタ、30セルのファンタジスタです。

シンフォニアは、EN-A認証ですがソアリング能力、滑空性能などのパフォーマンスも高く、ファーストグライダーではなく2機目以降が対象という意見が多かったです。

あたらしいコンセプトのグライダーですが、楽しくゆったりとフライトしたいパイロットにオススメです。

シンフォニアのページはこちら



投稿者名 上野陸 投稿日時 2017年12月01日 | Permalink