安全とは?安全文化という考え


『安全は作り出すもの』
私が25年前このスカイスポーツの仕事をはじめたころ最初に教わりました。
次の本を読み、あらためてこの言葉を再認識しました。

「航空安全とパイロットの危機管理」小林宏之著(成山堂書店)、著者の小林宏之氏はJALで42年間、総飛行時間18,500時間フライトしグレートキャプテンと呼ばれています。氏ならではの実体験に基づいた危機管理について書かれた本です。


安全をどう捉えるか?


 以下要約です。
 安全というものははじめから存在するものではなく、「危険でないこと」をさまざまな努力をした結果をさすにすぎない。
 ICAO(国際民間航空機関)によると「安全というものは、どこにもない。危険はどこにも存在し、あるいは潜在している。危険とは人体への危害や物を損害させる要因であって、一般にハザードといい、ハザードが実際に発生する可能性をリスクという。」
 その危険要因やリスクを洗い出して特定する。特定した危険要因、リスクを排除できるものは排除し、排除できないものは、可能な限りその影響を軽減している状態を維持する。
 たとえ、リスクが実際に発生しても大事には至らず、許容できる範囲内に収める対応を継続的に維持している状態を、安全であるといえるのではないか。現実の社会にあっては、「絶対安全」にも「安全神話」も存在しない。
 運航の現場に携わる者としては、存在し、潜在する危険要因やリスクを管理するのだ、と言う考え方で業務に取り組むことがより具体的に安全を確保できるのではないだろうか。
 航空の現場に従事する者としては、つねに危機意識を持ってリスクと対峙し待機しながら、「いかなることがあっても、安全のレベルを許容範囲に維持するのだ」と言う気構えで仕事に臨むことが大切である。


「安全文化」とは


 安全というものは、これだけしっかりやっておけば大丈夫というものではない。安全文化という土壌が構築されてよりしっかりとした安全確保の体質ができていくのである。 
 「安全文化」という言葉が正式に使われるようになったのは、1986年に起こったチェルノブイリ原子力発電所の事故原因の調査と、分析の結果から公式に使用されるようになった。
 その後、世界各地で大きな事故があるたびに「安全文化の欠如」が指摘され、「安全文化の構築の必要性」が勧告されている。
 事故の根本的な原因として、 現場の作業員も、 事業者も、 国別レベルでも、 原子力の安全に対する考え方や意識そのものに問題があり、それは文化と呼べる深さや組織あるいは社会の意識や行動を左右しているのではないか。
 そして「安全文化」と言うものも一度構築すれば、盤石となるというのではなく、常に揺れ動いてしまう生き物である。どの事業であれ「 何が一番大切か、 何を最優先すべきか」ということを軸足にして活動していくことが、安全を確保するうえで最も基本的なことであることも知らされた。


 危機要因やリスクを回避することは、空を飛ぶということに限ったことだけではありません。昨今の想定外の自然災害はどこにでも起こりえる時代です。大事なことは危機要因やリスクに向き合い危機管理を行うということではないでしょうか?
 それではまた。



投稿者名 上野陸 投稿日時 2018年07月29日 | Permalink